東京地方裁判所 平成3年(特わ)2331号 判決 1992年7月30日
本店所在地
東京都新宿区上落合二丁目五番二号
藤工業株式会社
(代表者代表取締役 藤田專一)
本籍
東京都練馬区大泉学園町四丁目二八番
住居
同都同区大泉学園町四丁目二八番一七号
会社役員
藤田專一
昭和一五年七月二日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
検察官 立澤正人、范揚恭 弁護人 湯山孝弘 各出席
主文
被告会社藤工業株式会社を罰金四〇〇〇万円に、
被告人藤田專一を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人藤田專一に対しこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告会社藤工業株式会社は、東京都新宿区上落合二丁目五番二号(平成三年九月四日以前は、同区北新宿二丁目二四番一〇号)に本店を置き、鉄筋工事請負業等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人藤田は、同社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人藤田は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和六二年三月一日から同六三年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九六八四万八九二三円であったにもかかわらず(別紙1の修正損益計算書参照)、同六三年四月二六日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所轄新宿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇九三万七円であり、これに対する法人税額が三五五万五六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成四年押第二六九号の1)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三九六四万一一〇〇円と右申告税額との差額三六〇八万五五〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れ
第二 昭和六三年三月一日から平成元年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億四一八八万六六五〇円であったにもかかわらず(別紙3の修正損益計算書参照)、同元年四月二五日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三七八五万六二五七円であり、これに対する法人税額が一四七六万五六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億四五万八二〇〇円と右申告税額との差額八五六九万二六〇〇円(別紙4の脱税額計算書参照)を免れ
第三 平成元年三月一日から同二年二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億四二三五万六三〇三円であったにもかかわらず(別紙5の修正損益計算書参照)、同二年四月二六日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六二一五万九一〇二円であり、これに対する法人税額が二五一〇万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億七八万三七〇〇円と右申告税額との差額七五六八万二七〇〇円(別紙6の脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠)
判示全部の事実について
一 被告人藤田の当公判廷における供述
一 被告人藤田の検察官に対する各供述調書(六通)
一 山口文雄(二通)、内藤健一、金子真琴、上原信、武井宏文、市山正一、森田敏勝、山田孝行、境良子、藤田髙美、当真嗣定、下園幸夫の検察官に対する各供述調書
一 麻生孝、武政正夫、小形みね子の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の売上高調査書、材料費調査書、期末材料棚卸高調査書、給料調査書、工賃調査書、外注加工費調査書、福利厚生費調査書、交際費調査書、消耗品費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、交際費限度超過額調査書、道府県民税利子割調査書、事業税認定損調査書
一 検察事務官作成の捜査報告書
一 登記官作成の登記簿謄本
判示第一の事実について
一 検察官作成の捜査報告書
一 押収してある法人税確定申告書一袋(昭和六三年二月期)(平成四年押第二六九号の1)
判示第二の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(平成元年二月期)(前同押号の2)
判示第三の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(平成二年二月期)(前同押号の3)
(適用法令)
罰条 判示第一ないし三の各事実について
被告会社関係
法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)
被告人藤田関係
法人税法一五九条一項(いずれについても、懲役刑選択)
併合罪加重 被告会社関係 刑法四五条前段、四八条二項
被告人藤田関係 刑法四五条前段、四七条本文
執行猶予 被告人藤田関係 刑法二五条一項
(量刑理由)
本件における法人税の脱税額は、三年分で二億円近くに上り、決して少なくない金額であり、本来納めるべき税額に対し免れた税金の割合も、三年分で見ると八〇パーセントを超えており大きい。脱税の手段として、各年度において売上げの除外や材料費の架空計上が行われ、更に年度によっては工賃の架空計上や外注加工費の架空計上なども行われており、その上それらが発覚しないようあれこれ工作しており、脱税のため取られた手段は、計画的、巧妙であり悪質である。
一方、脱税にかかる本税及び重加算税等の附加税について、被告人は多額の借金をするなど鋭意努力して全て納付し終えていること、本件脱税を深く反省し、被告人は再び同様のことを繰り返さない決意を示し、そのための体制を整えていること、被告人は非行少年の更正活動に協力し社会奉仕に努めていることなど、被告会社及び被告人のため酌むべき事情が存在する。
そこで、以上の各事情及びその他の諸般の情状を考慮して主文のとおり量刑する。
(求刑 被告会社・罰金七〇〇〇万円、被告人藤田・懲役一年六月)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 松浦繁)
別紙1
修正損益計算書
<省略>
別紙2
税額計算書
<省略>
別紙3 修正損益計算書
<省略>
別紙4
税額計算書
<省略>
別紙5
修正損益計算書
<省略>
別紙6
税額計算書
<省略>
<省略>